北朝鮮の生物兵器プログラムに関する報告書

米国ハーバード大学ベルファー科学・国際問題研究所が北朝鮮の生物兵器プログラムに関して報告書をまとめている。北朝鮮の生物兵器プログラムについて文献的に知られていることをまとめ、また、米国、韓国の生物兵器対策の現状を併せてまとめ、監視体制に関する提言を行っている。

North Korea’s Biological Weapons Program: The Known and Unknown | Belfer Center for Science and International Affairs 

米・HHS、エボラ出血熱に効果のあるワクチンと治療薬を備蓄

米・保健福祉省(HHS)は、プロジェクト・バイオシールドの資金を使って、エボラ出血熱に効果のある2つのワクチンと2つの治療薬を戦略的国家備蓄(SNS)に加えると発表した。

Project BioShield Adds Ebola Vaccines, Drugs to US Stockpile

CIDRAP Monday, October 2, 2017

http://www.cidrap.umn.edu/news-perspective/2017/10/project-bioshield-adds-ebola-vaccines-drugs-us-stockpile

米・CDCとそのパートナーの貢献

米・疾病対策予防センター(CDC)とそのパートナーのグローバル・ヘルス・セキュリティへの貢献についての記事が、Emerging Infectious Diseasesに掲載されている。2005年に改正された国際保健規則(IHR)は、公衆衛生上の緊急事態に対処するためのコア・キャパシティの保有を各国に求めている。しかし、2014年12月の時点で、コア・キャパシティの保有を申告している国は、全体の33%にすぎない。CDCとそのパートナーは、さまざまなイニシアチブを通じて、グローバル・ヘルス・セキュリティの向上に貢献してきたと記事は伝えている。

US Centers for Disease Control and Prevention and Its Partners’ Contributions to Global Health Security

Emerging Infectious Diseases, October, 2017

https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/23/13/17-0946_article

米・BARDA、天然痘ワクチンの製造と保管に5億3900万ドルを提供

米・生物医学先端研究開発局(BARDA)は、凍結乾燥の天然痘ワクチンImvamuneの製造および保管に向けて、最大で5億3900万ドルの資金を提供する契約をBavarian Nordic社と交わした。今回の契約によって、Imvamuneの製造キャパシティが大幅に向上することが期待される。

Bavarian Nordic Wins Up-to-$539M BARDA Contract for Smallpox Vaccine

GEN News Highlights Thursday, September 28, 2017

http://www.genengnews.com/gen-news-highlights/bavarian-nordic-wins-up-to-539m-barda-contract-for-smallpox-vaccine/81254984

米・上院、NBACCを稼動するための資金を含む予算案を可決

先日ブログでも紹介したとおり、トランプ政権が提示した2018年度の予算案では、バイオディフェンス関連の予算が大幅に削減されていた。特に、予算案には、国立バイオディフェンス分析および対策センター(NBACC)を稼動するための資金が計上されていなかったため、閉鎖になる可能性があると指摘されていた。しかし、9月に上院で可決した修正予算案では、NBACCを稼動するための資金が計上されており、今後の行方が注目されている。

Bioterrorism: US House of Representatives Pass Budget Bill That Includes Funding for the NBACC

Outbreak News Today Saturday, September 16, 2017

http://outbreaknewstoday.com/bioterrorism-us-house-representatives-pass-budget-bill-includes-funding-nbacc-88154/

第3回バイオセキュリティ研究会「感染症危機管理の人材育成」の会議録を公開しました。

第3回バイオセキュリティ研究会:テーマ「感染症危機管理の人材育成」の会議録を作成しましたので公開いたします。

プログラム

演題1:バイオセキュリティと求められる人材像
齋藤 智也 国立保健医療科学院健康危機管理研究部

公衆衛生分野における感染症危機管理人材の育成は急務である一方、バイオセキュリティの分野は、旧来の分野に止まらない学際的な領域に成長しつつあり、多様性のある人材が求められている。バイオセキュリティの関係領域や教育プログラムを紹介しつつ、求められる人材像を考察する。

演題2:厚生労働省感染症危機管理専門家養成プログラムIDES)の経験

2014~2015年の西アフリカにおけるエボラウイルス病流行を契機に、感染症危機管理のスペシャリスト養成を目的とする「感染症危機管理専門家養成プログラム(通称IDES (アイデス))」が2015年に開始した。感染症危機管理に求められる、感染症疾患に対する臨床経験に加え、行政知識、国際調整能力等、総合的な知識と経験を得るべく、国内外の関係機関での修練を積む2年間のプログラムである。この度プログラムを終えた第1期生4名ののうちの2名に、プログラムで得られた経験をお話し頂き、本分野の人材育成のあり方について議論を深めたい。

演題2-1: GAVIワクチンアライアンスでの経験
氏家 無限 国立国際医療研究センター国際感染症センター

2015年度より開始された感染症危機管理専門家養成プログラムを通じて、Gaviワクチンアライアンスにおいて低所得国でのワクチンプログラムの導入に関する職務を経験した。プログラムを通じて、感染症危機管理の観点から感染症危機管理専門家養成プログラム及びGaviワクチンアライアンスの概要を紹介するとともに、今後の課題について検討する。

演題2-2: 米国保健福祉省での経験
杉原 淳  厚生労働省大臣官房厚生科学課長補佐
感染症危機管理専門家養成プログラムを通して、米国保健福祉省疾病対策予防センターでの公衆衛生危機管理フェローシップ、事前準備対応次官補局での厚生労働省とのリエゾン業務を経験した。米国の公衆衛生危機管理施策は、国家安全保障の一部として位置付けられ、幅広い領域を巻き込み発展しており、新政権においても重要課題の一つに位置付けられている。米国の公衆衛生危機管理及び日本の課題、本領域における今後の日米協力の方向性について検討する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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DURCについての報告書

全米アカデミーズの「懸念のあるデュアル・ユース研究(DURC)についての委員会(Committee on Dual Use Research of Concern:Options for Future Management)」は、それまでの議論の成果をまとめた報告書を公開した。報告書では、米国におけるDURCに関連する政策や適切にマネジメントするための方法についての考察が示されている。

Dual Use Research of Concern in the Life Sciences

Committee on Dual Use Research of Concern:Options for Future Management, September, 2017

https://www.nap.edu/catalog/24761/dual-use-research-of-concern-in-the-life-sciences-current

BWCの課題について

1975年に発効した生物兵器禁止条約(BWC)は、国家、テロ組織、あるいは個人による生物兵器の開発、生産、備蓄などを防ぐための重要な役割を果たしてきた。しかし、現在、財源や会期間プログラムの方向性をめぐって、さまざまな課題を抱えている。

BROOKINGSに掲載されている記事では、(1)現在、滞納されている分の支払いを含む、締約国による充分で持続可能な財源、(2)国際社会におけるBWCの重要性を再確認し、会期間プログラムを開発するための強いリーダーシップと12月の締約国会合での成功、(3)より大きな相互接続するグローバル安全保障アーキテクチャーにおけるBWCの役割を明確にするためのビジョン、という3つが必要と指摘されている。

The Biological Weapons Convention at a crossroad

BROOKINGS Wednesday, September 6, 2017

https://www.brookings.edu/blog/order-from-chaos/2017/09/06/the-biological-weapons-convention-at-a-crossroad/

日本における生命科学研究のデュアルユース性に関する取り組みの現状

本論文は、以下の論文を日本バイオセーフティ学会より許可を得て転載しています。 齋藤智也. 日本における生命科学研究のデュアルユース性に関する取り組みの現状. JBSA Newsletter. 2016;6(2):11-16.

総説

日本における生命科学研究のデュアルユース性に関する取り組みの現状

齋藤 智也
国立保健医療科学院健康危機管理研究部

1. はじめに

生命科学のデュアルユース性(用途の両義性)の管理のあり方が問われている。1990年代から、生命科学の誤用・悪用の懸念を抱かせる研究がいくつか指摘され始めた1-3)。2011年のインフルエンザA/H5N1ウイルスのヒトへの空気伝播性に関する河岡氏らのグループ4)とフーシエ氏らグループの論文5)の公表の是非を巡る議論6)は、生命科学分野におけるデュアルユース問題について、科学界のより一層の関心を高めることになった。そのガバナンスのあり方については、各国で議論が進んでおり、特に米国7)、オランダ8)での進展が著しい。本稿では、本邦における本問題に対する取組み状況を振り返ってみたい。

2. 国内での生命科学のデュアルユース性に対する取組み〜普及啓発〜

国内での生命科学研究のデュアルユース性に対する取り組みは、「普及啓発」そして「科学者による自発的取組み」というステップを経てきた。前者には、セミナー等の開催や、教育素材の開発、教育機会の提供がある。後者には、学会でのシンポジウム開催、行動規範の制定や政策提言などがある。国内での取組みを表1 国内における生命科学のデュアルユース性に関する取組みにまとめた。

「普及啓発」については、国内では、防衛医科大学校や科学技術振興機構社会技術研究開発センター(JST/RISTEX)、慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所(G-SEC)らが中心となって進められてきた。防衛医科大学校では、英国ブラッドフォード大学と連携して教育プログラム開発に取組み、2008年度から、バイオセキュリティに関する高等教育プログラムを医学部学生および研究科(大学院)学生に提供してきた9)。国内の62大学197コース(学士・修士・博士)を対象とした峯畑らの2009年の調査報告10)によれば、生命倫理教育は7割程度で実施されているものの、バイオセキュリティ、デュアルユース、バイオセーフティの教育は1-2割しか実施されていなかった時代であり、生命科学者への普及啓発が急務であった。なお、教育プログラムの実施状況のその後の進展については、2016年4月に防衛医科大学校・四ノ宮教授と科学技術振興機構・峯畑フェローにより再調査が実施され、現在分析が行なわれているところである。なお、防衛医科大学校と英ブラッドフォード大学が共同開発した教育課程用オンライン教材は、日本語版も作成され、各教育機関における教育者がそれぞれの目的に合わせて改変可能な教育素材として、英ブラッドフォード大学ウェッブサイトに2009年から提供されている11)。現在では英語、日本語以外に7ヶ国語に翻訳されている。その他、教育に関するグローバルな取組みについては、峯畑らの文献12)を参照されたい。

JST/RISTEXは、文部科学省安全・安心科学技術プロジェクトの委託事業として、2007年度から古川勝久フェロー(当時)が率いたプロジェクトの中で、デュアルユース性のある生命科学研究のガバナンスについて、英ブラッドフォード大学、英エクスター大学、米国科学アカデミーなどの専門家によるセミナー等を開催するようになった13-15)。慶應義塾大学G-SECも同様に、竹内勤教授(当時)が率いた文部科学省安全・安心科学技術プロジェクトの委託事業および「わが国のバイオセキュリティ・バイオディフェンス準備・対応策策定についての医学・人文社会科学融合研究」グループで、セミナーや国際シンポジウムを16-18)、防衛医科大学校、JST/RISTEXのグループと連携しながら開催してきた。2010年に開催されたバイオセキュリティワークショップ「科学の倫理と機微技術のリスク管理」は、バイオセキュリティの観点を軸にしつつも、「科学のリスク管理・機微技術管理」という、より大きな枠組みで、社会システム論分析も加わった討論に発展した19)。アカデミアのみならず、主にバイオ関係企業に向けたセミナーも2013年に一般財団法人バイオインダストリー協会により行われている20)

筆者も関わった慶應義塾大学G-SECのプロジェクトでは、普及啓発・教育のための日本語素材の開発も行われた。2010年には、生命科学のデュアルユース性に関する諸外国の主要なドキュメントである、オランダの作成したバイオセキュリティ行動規範21)や「フィンクレポート」のエグゼクティブ・サマリーの邦訳22)を提供した。2013年には、本分野の日本語初の成書が、防衛医科大学四ノ宮教授・早稲田大学河原准教授(当時)の尽力により出版に至った23)

3. 国内での生命科学のデュアルユース性に対する取組み〜科学者による自発的取組み〜

上記のような普及啓発の取組みを背景に、日本学術会議は、2011年8月に外務省、防衛省等の協力の下、学術フォーラム「生命科学の進展に伴う新たなリスクと科学者の役割」を開催し、研究者コミュニティの内外にデュアルユースの問題を提起した。本フォーラムでは、改めてデュアルユース問題を共有し、情報発信の重要性や行動規範を策定する必要が指摘され、日本学術会議が積極的な役割を果たすべきだとの意見が出された24)。その直後に、インフルエンザA/H5N1ウイルスの論文の公表に関する議論が勃発するが、日本学術会議は、デュアルユース問題が生命科学のみならず幅広い分野に内在する課題、との認識のもと、2011年11月に分野横断的組織である課題別委員会の一つとして、「科学・技術のデュアルユース問題に関する検討委員会」を設置した25)。この委員会では、「科学・技術の用途の両義性に関わる規範」を示し、科学・技術の用途の両義性の問題を踏まえて、声明「科学者の行動規範について」の部分的改訂を行うことを提案するとともに、学術会議の各分野で両義性についてより具体的な議論や行動を促した。その後、2013年1月に、「科学者の行動規範—改訂版—」26)が発出された際に、科学研究の利用の両義性への危惧に関する項目も加えられた。さらに、日本学術会議は、基礎医学委員会に病原体研究に関するデュアルユース問題分科会を設置し、規範を具体的にあてはめて適用することの実例として、病原体研究に関連する用途の両義性問題を議論し、2013年に提言を報告した27)。提言では、研究者・技術者自身の思慮が十分でない場合や、研究組織や学協会側の現状認識の不足や研究者・技術者への不十分な支援体制を指摘し、病原体研究の危険性の認知とその限局化の努力、各研究機関による教育と管理、学協会の役割、国際的連携と日本学術会議の役割を提言している。具体策としては、学協会・学術会議からの情報発信、研究機関での個別審査制度等を挙げている。一方で、病原性を高める研究成果の発表方法の取扱いや、米国バイオセキュリティ諮問委員会(National Science Advisory Board for Biosecurity; NSABB)のような組織の必要性については継続審議としている。日本学術会議のデュアルユースに関する議論の過程では、2012年に「デュアルユース問題とBSL4施設シンポジウム」が開催され、デュアルユース問題とBSL4施設の問題に関する議論を包括的に捉えた議論が行われたこともあった27)

関係学会では、H5N1論文に関する議論の勃発後の2012年には、年次総会等でセッション等が設けられ、議論が行われた。日本生命倫理学会のほか、それぞれウイルス学、合成生物学、分子生物学の専門学会である日本ウイルス学会学術集会、「細胞を創る」研究会5.0、日本分子生物学会年会で、関係セッションが設けられた。これらの4学会での討議内容については、JST/CRDSの報告書28)に詳細が記載されている。

一方、JST/CRDSは、H5N1論文公表に関する議論を受けて、2012年にわが国の研究開発におけるバイオセキュリティ上のリスクとその対応に関する現状を調査している29)。2012年度には、わが国におけるライフサイエンス研究のデュアルユースへの対応方策の立案に向け、調査・提言活動を実施し、有識者を集めたワークショップを開催し、その報告をまとめているほか28)、日本学術会議の諸提言を、実際の研究開発や成果の社会実装の場に展開するために、府省等行政機関、資金配分機関、学会などの研究者コミュニティ、大学・研究機関、研究者個人・研究室に至る様々なステークホルダーについて、研究開発の段階に応じて取るべき対応策が提案されている30)

4. 生命科学研究におけるデュアルユース性への関係機関の関わり

 生命科学研究におけるデュアルユース性に対するガバナンスの構築にあたっては、研究の計画からその負の影響を生じるプロセスの中で、様々な関係分野の役割を俯瞰して検討する必要がある(図1)。研究プロセスは、科学者が着想し、計画し、資金を得て、資材を購入し実験を行う。そして、その成果を発表・出版する。その成果が誤用・悪用されると、社会に対して負の影響を及ぼすことになる。科学コミュニティの重要な役割は、研究の着想から成果の公表に至るプロセスにある。特に、行動規範による自主的な統制は、研究活動に対する社会の理解を得る上で重要である。そして安全に実験を行うバイオセーフティの遵守は、ラボ・バイオリスク管理の中で、科学界が主として取り組むべき事項である。普及啓発と教育、リスク・ベネフィット分析、そしてラボ・バイオセキュリティを含むラボ・バイオリスク管理は、科学、インテリジェンス・セキュリティ、公衆衛生の3分野が協働して取り組むべき課題である。誤用・悪用の防止は、インテリジェンス・セキュリティ分野が主として取り組むべき分野であり、輸出管理・犯罪管理のプロセスがこれにあたる。感染症流行という形で負の影響が現れた際の対処は公衆衛生分野が一義的に取り組まなければならない。このように、生命科学研究のデュアルユース性のリスク管理は、多層的な取り組みが必要とされる。各分野がそれぞれの役割を認識しつつ、協働して行うべきプロセスについてはその協働プラットフォームを構築していく必要がある。

図1 生命科学研究におけるデュアルユース性の関係分野と役割

 5. おわりに

生命科学のデュアルユース性の問題に対して、過去約10年間に国内で取り組まれてきた取組みを整理した。2000年代後半から2010年代初頭にかけて、普及啓発から、行動規範の改訂や提言等、科学コミュニティ主導の取組みが行われてきているが、さらなる普及啓発や意識向上、ほか、具体的な管理方策のあり方についての議論が近年は低調である。各大学での教育における普及状況についての調査結果を待って、今後の取り組みを検討する必要がある。なお、今年度は日本バイオセーフティ学会と日本生命倫理学会にて関係シンポジウムが企画中である。これまで生命科学研究のデュアルユース性について、普及啓発や調査研究を行ってきた研究者を中心に、平成27年度より文部科学省科研費特設分野研究(紛争研究)の支援を受け、バイオセキュリティ研究を加速している。研究班のホームページを開設しており、研究班員の業績の他、リンク集、バイオセキュリティに関係する世界各地のニュース等もブログ形式で紹介しているので参照いただきたい (http://biosecurity.jp)。平成28年3月には第1回バイオセキュリティ研究会を開催した。生命科学研究のデュアルユース性に関する話題も含め、今後も年間2〜3回程度開催する予定である。

 6. まとめ

日本国内における生命科学研究におけるデュアルユース性のガバナンス構築に向けた取組みを紹介した。普及啓発・科学者の自主的な取組みは進んでおり、草の根的なセミナーから始まり、日本語での教育素材も充実しつつあり、政策的には、日本学術会議による提言の発出にまで至っているところである。研究の「管理」は、行政主導で進行すると望まない過剰規制を生む懸念がある。今後、アカデミアにおける教育等の取り組みの普及状況を注視つつ、科学者側から、社会に理解を得られるガバナンス体制を提示していくことが望まれる。一方、ガバナンス体制の構築に当たっては、研究の着想から誤用・悪用による負の影響に至るプロセスを俯瞰して、関係コミュニティの役割を整理しつつ、それぞれが役割を認識し、協働して取り組む枠組みを形成しながら統合的な方針を検討していく必要がある。

謝辞

本稿の作成には、日本医療研究開発機構感染症実用化研究事業新興・再興感染症に対する革新的医療品等開発推進研究事業「わが国における高病原性病原体取扱い者の安全を確保するための研究」、文部科学省科研費(15KT0054)の支援を受けた。

参考文献

  1. Borzenkov VM., et al. [The additive synthesis of a retulatory peptide in vivo: the administration of a vaccinal Francisella tularensisi strain that produces beta-endorphin]. Biull Eksp Biol Med. 116, 151-153, 1993.
  2. Pomerantsev AP., et al., Expression of cereolysine AB genes in Bacillus anthracis vaccine strain ensures protection against experimental hemolytic anthrax infection. VAccine 15, 1846-1850, 1997.
  3. Jackson RJ., et al. Expression of mouse interleukin-4 by a recombinant ectromelia virus suppresses cytolytic lymphocyte responses and overcomes genetic resistance to mousepox. J Virol, 75, 1205-1210, 2001.
  4. Imai T, Watanabe T, Hatta M, Subash CD, Ozawa M, Shinya K, Zhong GG, Hanson A, Katsura H, Watanabe S, Li C, Kawakami E, Yamada S, Kiso M, Suzuki Y, Maher AE, Neumann G and Kawaoka Y.:Experimental adaptation of an influenza H5 HA confers respiratory droplet transmission to a reassortant H5 HA/H1N1 virus in ferrets. Nature 486:420-428, 2012.
  5. Herfst S, Schrauwen JEE, Linster M, Chutinimitkul S, Wit E, Munster JV, Sorrell ME, Bestebroer MT, Burke FD, Smith JD, Rimmelzwaan FG, Osterhaus DMEA, Fouchie AMR.:Airborne Transmission of Influenza A/H5N1 Virus Between Ferrets. Science Vol. 336 no. 6088:1534-1541, 2012.
  6. 田代眞人.:ヒトで感染伝播する可能性のある強毒型H5N1鳥インフルエンザウイルスの論文発表に関するDual use問題. ウイルス 62(1):97-102, 2012.
  7. 天野修司,齋藤智也.米国におけるデュアルユース性が懸念される研究(Dual Use Research of Concern; DURC)に関する政策動向. ウイルス 65(2), 295-300,2015.
  8. 齋藤智也, 天野修司. オランダのバイオセキュリティ強化政策. ウイルス 65(2), 287-294, 2015.
  9. Minehata M and Shinomiya N. Chapter 5: Japan: Obstacles, Lessons and Future, In Education and Ethics in the Life Sciences: strengthening the prohibition of biological weapons, edited by Brian Rappert, Series: Practical ethics and public policy; no. 1., published by ANU E Press, The Australian National University, Canberra, Australia, 93-114, 2010.
  10. Minehata M and Shonomiya N. Dual-use Education in Life-Science Degree Courses at Universities in Japan: Survey Report. National Defense Medical College, Japan and Bradford Disarmament Research Centre, University of Bradford, UK. 2009
  11. http://www.brad.ac.uk/acad/sbtwc/dube/lectures/lectures_inJPNse.htmlより入手可能である。
  12. Minehata M, Sture J, Shinomiya N, Whitby S, and Dando M. Promoting Education of Dual-Use Issues for Life Scientists: A Comprehensive Approach. Journal of Disaster Research Vol.8 No.4, 674-685, 2013.
  13. 科学技術振興機構社会技術研究開発センター. 平成19年度文部科学省委託事業安全・安心科学技術プロジェクト「テロ対策・危険物検知のための科学技術に関する情報収集・分析等の調査研究」報告書. 2008.
  14. 科学技術振興機構社会技術研究開発センター. 平成20年度文部科学省委託事業安全・安心科学技術プロジェクト「社会に実装されるテロ対策のための科学技術の在り方に関する調査研究」報告書. 2009.
  15. 科学技術振興機構社会技術研究開発センター. 平成21年度文部科学省委託事業安全・安心科学技術プロジェクト「テロ対策のための科学技術の最新動向および研究成果の実装化に関する調査研究」報告書. 2010.
  16. 慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所. 平成20年度文部科学省委託事業安全・安心科学技術プロジェクト「我が国のバイオセキュリティの向上に関する調査研究」報告書. 2009.
  17. 慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所. 平成21年度文部科学省委託事業安全・安心科学技術プロジェクト「テロ等への医学的見地からの公衆衛生措置や医療的対策に関する調査研究」報告書. 2010.
  18. 日本学術振興会 二国間交流事業 日英合同セミナー「バイオセキュリティ、デュアルユースジレンマと生命科学者のための教育」報告書.
  19. 慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所.バイオセキュリティワークショップ「科学の倫理と機微技術のリスク管理」開催報告書. 2011.
  20. 一般財団法人バイオインダストリー協会ホームページ セミナーイベント報告「バイオセキュリティセミナー -バイオ研究におけるデュアルユース問題にどう取り組むか-」 http://www.jba.or.jp/pc/archive/activitie/2013/development_base/info/000788.html. 2013
  21. A Code of Conduct for Biosecurity –Report by the Biosecurity Working Group. Royal Netherlands Academy of Arts and Sciences. 2007. 邦訳はhttp://biosecurity.jp/publicationより入手可能.
  22. 米国科学アカデミー「Biotechnology Research in an age of terrorism」2004  (邦文抄訳)
  23. 生命科学とバイオセキュリティ デュアルユース・ジレンマとその対応. 四ノ宮成祥/河原直人編著. 東信堂. 2013.
  24. 日本学術会議 報告「科学・技術のデュアルユース問題に関する検討報告」平成24年11月30日.
  25. 日本学術会議「声明 科学者の行動規範–改訂版-」 平成25年1月25日. 
  26. 日本学術会議基礎医学委員会病原体研究に関するデュアルユース問題分科会「提言 病原体研究に関するデュアルユース問題」平成26年1月23日.
  27. 日本学術会議基礎生物学委員会・統合生物学委員会・農学委員会・基礎医学委員会・臨床医学委員会合同総合微生物科学分科会. 提言「我が国のバイオセーフティレベル4(BSL-4)施設の必要性について」. 平成26年3月20日. 
  28. 科学技術振興機構研究開発戦略センター. 科学技術未来戦略ワークショップ報告書「ライフサイエンス研究開発におけるバイオセキュリティの実装戦略」. 2013.
  29. 科学技術振興機構研究開発戦略センター. バイオセキュリティに関する研究機関、資金配分機関、政府機関、国際機関等の対応の現状調査報告. 2012.
  30. 科学技術振興機構研究開発戦略センター.戦略プロポーザル ライフサイエンス研究の将来性ある発展のためのデュアルユース対策とそのガバナンス体制整備.2013. 

天然痘ウイルスの人工合成を防ぐための方策についての論文

Health Securityに、「新しい馬痘ウイルスの合成:バイオセキュリティへのインプリケーションおよび天然痘の再出現を防ぐための勧告(The De Novo Synthesis of Horsepox Virus: Imprecations for Biosecurity and Recommendations for Preventing the Reemergence of Smallpox)」と題する論文が掲載されている(関連記事は、こちら)。論文では、天然痘ウイルスが人工的に合成されるのを防ぐために国際社会、各国の政府、およびDNA合成産業が取り組むべき課題が示されている。

The De Novo Synthesis of Horsepox Virus: Implications for Biosecurity and Recommendations for Preventing the Reemergence of Smallpox

Health Security Thursday, August 24, 2017

http://online.liebertpub.com/doi/full/10.1089/hs.2017.0061