第3回バイオセキュリティ研究会を開催します

第3回バイオセキュリティ研究会

グローバルな感染症の脅威への対策は、伝統的な学問領域の境界を逸脱しつつある。
従来は公衆衛生の問題と考えられていた感染症の流行が、いまや国家や国際社会の危機管理上の最優先課題として度々取り扱われている。他方、安全保障学・政治学の分野でも、生物兵器・テロ対策の文脈から永く議論されてきたが、現実的な対応には公衆衛生の専門家の存在は欠かせない。分野横断的にグローバルなバイオセキュリティのランドスケープを捉えることで問題を整理し、既存の学問体系を再整理して現実に即した解決を提示する新たな学問領域のフレームワークを提示していくことが本研究会の目的である。

第3回研究会は、バイオセキュリティ分野の人材育成、特に「感染症危機管理の人材育成」をテーマとして取り上げる。バイオセキュリティは、公衆衛生と安全保障の接点に立つ新たな複合的領域であり、多様な背景を持った人材が必要とされている。その中でも、現在急速に進んでいる公衆衛生分野の人材育成にまずは焦点を当ててみたい。

2014年~2015年のエボラウイルス病の危機を契機に、国内でも国際感染症対策への取組みが進められ、感染症危機管理の人材育成が進められてきた。その一つが厚生労働省の「感染症危機管理専門家養成プログラム”IDES”」である。その一期生がこの5月に2年間のプログラムを修了した。感染症医に中央行政と国際経験を積ませるこのプログラムの経験について2名の先生をお招きし、本分野の人材育成のあり方について議論を深めたい。

プログラム

演題1:バイオセキュリティと求められる人材像

公衆衛生分野における感染症危機管理人材の育成は急務である一方、バイオセキュリティの分野は、旧来の分野に止まらない学際的な領域に成長しつつあり、多様性のある人材が求められている。バイオセキュリティの関係領域や教育プログラムを紹介しつつ、求められる人材像を考察する。

齋藤 智也 国立保健医療科学院健康危機管理研究部
慶應義塾大学医学部熱帯医学・寄生虫学助教、同大グローバルセキュリティ研究所研究員を経て、2011年より厚生労働技官。厚生労働省健康危機管理対策室国際健康危機管理調整官、結核感染症課課長補佐を経て、2014年4月より現職。医師、公衆衛生学修士、医学博士。専門は公衆衛生危機管理、バイオセキュリティ、感染症疫学。

演題2:厚生労働省感染症危機管理専門家養成プログラムIDES)の経験

2014~2015年の西アフリカにおけるエボラウイルス病流行を契機に、感染症危機管理のスペシャリスト養成を目的とする「感染症危機管理専門家養成プログラム(通称IDES (アイデス))」が2015年に開始した。感染症危機管理に求められる、感染症疾患に対する臨床経験に加え、行政知識、国際調整能力等、総合的な知識と経験を得るべく、国内外の関係機関での修練を積む2年間のプログラムである。この度プログラムを終えた第1期生4名ののうちの2名に、プログラムで得られた経験をお話し頂き、本分野の人材育成のあり方について議論を深めたい。

演題2-1: GAVIワクチンアライアンスでの経験

2015年度より開始された感染症危機管理専門家養成プログラムを通じて、Gaviワクチンアライアンスにおいて低所得国でのワクチンプログラムの導入に関する職務を経験した。プログラムを通じて、感染症危機管理の観点から感染症危機管理専門家養成プログラム及びGaviワクチンアライアンスの概要を紹介するとともに、今後の課題について検討する。

氏家 無限 国立国際医療研究センター国際感染症センター
長崎大学熱帯医学研究所COE研究員、国立国際医療研究センター国際感染症センター医師を経て、2013年より厚生労働技官として結核感染症課にて感染症危機管理対応及び予防接種施策に関する業務を担当。2015年より感染症危機管理専門家養成プログラムに参加し、2016年5月から2017年4月までGaviワクチンアライアンスでシニアプログラムマネージャーとして、麻疹及び肺炎球菌プログラムに関する業務を担当した。2017年6月より現職。医師、熱帯医学修士。専門は予防接種、熱帯感染症、渡航医学。

演題2-2: 米国保健福祉省での経験
感染症危機管理専門家養成プログラムを通して、米国保健福祉省疾病対策予防センターでの公衆衛生危機管理フェローシップ、事前準備対応次官補局での厚生労働省とのリエゾン業務を経験した。米国の公衆衛生危機管理施策は、国家安全保障の一部として位置付けられ、幅広い領域を巻き込み発展しており、新政権においても重要課題の一つに位置付けられている。米国の公衆衛生危機管理及び日本の課題、本領域における今後の日米協力の方向性について検討する。

杉原 淳  厚生労働省大臣官房厚生科学課長補佐
国立国際医療研究センター総合感染症フェロー、メリーランド州保健精神衛生局、世界保健機関西太平洋事務局等を経て、2015年より感染症危機管理専門家養成プログラム第1期生。ジカウイルス感染症対策、薬剤耐性(AMR)対策、G7伊勢志摩サミット国際保健案件等を担当。2016年7月より米国疾病対策予防センター公衆衛生危機管理フェロー、11月より米国保健福祉省事前準備対応担当次官補局リエゾン。米国保健福祉省と厚生労働省との公衆衛生危機管理に関する政策協力の強化に向けたリエゾン機能の設置に関する業務に従事。医師、公衆衛生学修士、熱帯医学衛生ディプロマ。専門は臨床感染症、感染症疫学、公衆衛生危機管理。

開催日時と場所

平成29年713日(木19:00~21:00
AP新橋虎ノ門 会議室 B
東京都港区西新橋1丁目6番15号NS虎ノ門ビル11階
アクセス(外部リンク)

参加申し込み

申し込みはこちらからお願いします。

アクセスできない場合は、ご所属、氏名を添えて以下のアドレスにメールでお申し込みください。
seminar(アットマーク)biosecurity.jp ( (アットーマーク)を@に変えて送信してください)

定員(120名)に達し次第締め切ります。
申し込み期限: 平成29年7月10日月曜日 12日水曜日まで延長しました。